
「オーストラリアの離島」といえば、グレートバリアリーフやタスマニアを思い浮かべる方が多いでしょう。
しかし、ニューサウスウェールズ州沖合に浮かぶ「ロード・ハウ島(Lord Howe Island)」は、まだ日本人旅行者にはあまり知られていない秘境です。
世界自然遺産にも登録されたこの島は、観光客数を制限することで手つかずの自然環境を守り続けています。
珊瑚礁に囲まれたラグーン、緑豊かな山々、固有の動植物など。
ここでしか味わえない景観と静けさが広がります。
本記事では、ロード・ハウ島の魅力、観光スポット、滞在情報、注意点まで詳しくご紹介します。
ロード・ハウ島とは?基本情報と魅力

世界自然遺産に登録された島の特徴
ロード・ハウ島は、オーストラリア本土から約600km離れた南太平洋に浮かぶ小島です。
全長約11km、幅はわずか2kmと小規模ながら、世界でも稀な自然環境を有しています。
ユネスコの世界自然遺産に登録されており、その理由は「高い生物多様性」と「原始的な自然環境の保持」にあります。
特に有名なのが、島を囲むラグーン。
ここには世界最南端のサンゴ礁が広がり、透明度抜群の海で熱帯魚やウミガメと泳ぐことができます。
島の人口は約400人で、観光客も1日最大400人に制限されており、混雑とは無縁。
静かな環境で心から自然を楽しめる場所です。
島の歴史と文化的背景
ロード・ハウ島は1788年にイギリス人ヘンリー・リッジバードによって発見され、当時は捕鯨の補給基地として利用されました。
その後、移住者が増え、19世紀には小規模な農業や漁業が営まれるようになります。
現在の島民の多くは観光業と漁業で生計を立てていますが、観光開発は最小限に抑えられ、持続可能な形で進められています。
島では電力も自給の割合が高く、環境に負荷をかけない生活スタイルが根付いています。
歴史的建造物や古い集落跡も残っており、自然だけでなく文化的側面も魅力的です。
気候とベストシーズン
ロード・ハウ島は温暖な海洋性気候に属し、年間を通じて快適に過ごせるのが特徴です。
夏(12〜2月)は平均25℃前後、冬(6〜8月)でも15℃前後と穏やかで、極端な寒暖差はありません。
ベストシーズンは9月〜5月で、この時期は海の透明度が高く、シュノーケリングやダイビングに最適です。
冬は観光客が少ないため、静かな環境を求める人におすすめです。
季節ごとの魅力を理解すれば、自分に合った旅のスタイルが選べるでしょう。
ロード・ハウ島の観光スポット

マウント・ゴワーと絶景ハイキング
島の象徴的存在であるマウント・ゴワー(875m)は、ロード・ハウ島観光のハイライト。
山頂からは島全体を見渡せる絶景が広がり、晴れた日にはラグーンや隣接する島々まで望むことができます。
このトレッキングはガイド同行が必須で、約8時間かかる本格的なルートです。
険しい道のりですが、その分達成感と圧倒的な景色が待っています。
登山好きや自然愛好家にはぜひ挑戦してほしいスポットです。
世界最南端のサンゴ礁ラグーン
ロード・ハウ島の周囲には美しいサンゴ礁が広がり、世界最南端に位置するラグーンとして知られています。
水中ではカラフルな熱帯魚、マンタ、ウミガメに出会うことができ、スキューバダイビングやシュノーケリングの聖地となっています。
浅瀬が多いため初心者でも安心して楽しめるのも魅力です。
また、ラグーン越しに沈む夕日は言葉を失うほどの美しさで、写真愛好家にも人気のスポットです。
野生動物との出会い
ロード・ハウ島は野生動物の宝庫でもあります。
特に有名なのはロード・ハウクイナという飛べない鳥で、島の固有種です。
また、季節によっては海鳥の繁殖が盛んになり、数百万羽の鳥が島に集まります。
さらに、周辺の海域ではイルカやクジラに出会えることもあります。
人の手が加わっていない自然環境だからこそ、動物たちが安心して暮らしている姿を間近で見ることができるのです。
ロード・ハウ島で体験できるアクティビティ
シュノーケリングとダイビング
ロード・ハウ島はダイバー憧れのスポットとして知られています。
透明度の高いラグーンは、初心者から上級者まで楽しめる環境です。
シュノーケリングでは浅瀬でウミガメと泳ぐことも可能で、ダイビングでは海底洞窟や沈没船の探索も体験できます。
オーストラリアの他の離島では味わえない、独特の海中世界が広がっています。
サイクリングと自然散策
ロード・ハウ島にはレンタカーが少なく、観光の中心は自転車。
島には専用のサイクリングロードが整備されており、緑の森やビーチを横目に走るのは爽快です。
途中で野鳥を観察したり、展望台に立ち寄ったりと、ゆったりと自然を感じられます。
徒歩での散策も魅力的で、短時間でアクセスできるトレッキングルートも豊富です。
バードウォッチングとエコツアー
ロード・ハウ島はバードウォッチャーにとっても楽園です。
固有種や渡り鳥が集まるため、希少な鳥を観察できる機会が多くあります。
ガイド付きのエコツアーでは、専門家の解説を聞きながら鳥や植物を観察でき、自然保護の重要性も学べます。
自然に触れるだけでなく「守る意識」も高められる貴重な体験です。
滞在とアクセス情報

シドニーからのアクセス方法
ロード・ハウ島へのアクセスは飛行機のみで、シドニーとブリスベンから直行便が運航しています。
フライト時間は約2時間で、1日数便のみ。
座席数が限られているため、数ヶ月前からの予約が推奨されます。
船でのアクセスは基本的に観光客向けには提供されていません。
そのため「限られた人しか行けない楽園」という希少価値が保たれているのです。
参考URL
https://www.lhib.nsw.gov.au/
宿泊施設と滞在スタイル
島には高級リゾートからロッジタイプの宿泊施設まで幅広く揃っています。
ただし宿泊人数制限の影響で客室数自体が少ないため、早めの予約が必要です。
どの宿泊施設も自然との調和を意識した設計で、窓からは海や山の絶景を望めます。
テレビやWi-Fiのない宿も多く、日常の喧騒から離れて過ごせるのが特徴です。
食事と島のグルメ体験
ロード・ハウ島では地元の魚介類やオーガニック食材を使った料理が楽しめます。
新鮮なシーフードはもちろん、島産の野菜や果物も豊富。
宿泊施設のレストランでの食事が中心ですが、小さなカフェやバーもあり、島の人々との交流も魅力の一つです。
おすすめのお店
Jim’s LHI
コーヒーはもちろん美味しいですが、タルトやチキンロール、様々なケーキ、バナナブレッド、ビスケットなど全て手作りで最高です。
The Anchorage
ロード・ハウ島の美しい景観を望む絶好のロケーションで、現代的なオーストラリア料理を提供するレストランです。毎日変わるディナー、ベーカリーで焼きたてのパンやケーキ、パティスリーも充実。海を眺めながらゆったりとした時間を過ごしたい方、特別な日のディナーやビーチピクニックにもぴったりな一軒です。
ロード・ハウ島旅行の注意事項

ロード・ハウ島は楽園のような美しい離島ですが、他の観光地とは異なる特有のルールや制約があります。
世界自然遺産として登録されているため、自然環境の保護が最優先。
そのため、宿泊者数の制限や持ち込み品の規制、通信や交通手段の制約など、訪問前に知っておくべき点がいくつもあります。
以下では、旅行者が特に注意したい5つのポイントを解説します。
宿泊と人数制限について
ロード・ハウ島は「楽園」とも称される美しい離島ですが、訪れる際には他の観光地とは異なる特有のルールや制約があります。
世界自然遺産に登録されているため、環境保護と持続可能な観光が最優先されているのです。
宿泊人数の制限や持ち込み禁止物、交通や費用の事情など、知っておかないと困るポイントも少なくありません。
事前に理解しておけば、安心して旅を満喫できます。
以下では旅行者が特に気をつけるべき5つの注意点を解説します。
島での環境保護ルール
ロード・ハウ島は環境保護が徹底されており、観光客もその一翼を担う存在とされています。
プラスチックごみ削減のため、使い捨てボトルや袋の持ち込みは推奨されていません。
また、島の動植物は採取禁止で、貝殻や石を記念に持ち帰ることもできません。
さらに、散策中の立ち入り禁止エリアやハイキングルートの制限もあり、ガイド付きでしか登れない山も存在します。
自然を壊さず「見るだけ」に徹する意識が大切です。
費用と事前予約の重要性
ロード・ハウ島は物資のほとんどを本土から輸送しているため、宿泊費や食事代はオーストラリア国内でも高額な部類に入ります。
宿泊は1泊あたり2〜3万円以上が相場で、リゾートタイプの宿はさらに高額になります。
航空便も少なく、シドニーやブリスベンからの直行便は座席数が限られているため、予約が遅れると入島自体ができなくなる可能性もあります。
費用面を把握し、フライト・宿泊はできるだけ早めに押さえるのが鉄則です。
島内での交通手段
ロード・ハウ島ではレンタカーがほとんどなく、観光の中心は徒歩と自転車です。
坂道が多いため、体力に自信がない方は事前に電動自転車をレンタルすると快適に移動できます。
バスやタクシーもありますが本数が少なく、基本的には自分の足で動くことを前提にプランを立てましょう。
また、島の道路は狭く、車のスピード制限も時速25km以下と厳格に守られています。
都会の感覚で交通手段を想定すると不便に感じるため、現地のスタイルを理解しておくことが大切です。
通信環境と現金利用について
ロード・ハウ島はインターネット環境が限られており、Wi-Fiが使える場所は一部の宿泊施設やカフェに限られます。
高速通信は期待できず、リモートワークや動画視聴には不向きです。
また、島内ではクレジットカードが使える場所もありますが、小規模のショップやアクティビティでは現金払いのみのケースも残っています。
ATMは島に1台しかないため、オーストラリア本土で十分な現金を用意してから渡航することをおすすめします。
まとめ
ロード・ハウ島は、オーストラリアの離島の中でも特別な存在です。
観光客数を制限することで保たれた自然環境、透明度抜群のラグーン、絶景のマウント・ゴワー、固有の動植物…。
どこを切り取っても「地球最後の楽園」と呼ぶにふさわしい魅力があります。
その一方で、アクセスや宿泊には計画性が求められ、費用も高め。
しかし、それらのハードルを超えて訪れる価値は十分にあります。
SNS映えする写真だけでなく、心に深く残る体験を与えてくれるロード・ハウ島。
次の休暇に特別な旅行を考えている方に、ぜひおすすめしたい目的地です。
おわりに
オーストラリアには数多くの離島がありますが、ロード・ハウ島はその中でも特別な存在です。
自然と人間が共生する持続可能な観光地として、他では味わえない旅の魅力を提供してくれます。
都会からわずか2時間のフライトでたどり着けるにもかかわらず、そこには全く別世界が広がっています。
訪問には準備が必要ですが、その分得られる体験はかけがえのないもの。
次の旅先候補に、ぜひ「オーストラリア ロード・ハウ島」を加えてみてください。