
オーストラリアは、美しい自然や都市の活気、そしてフレンドリーな人々で世界中の旅行者を惹きつける国です。
しかし、「比較的安全」とされる一方で、日本と比べると軽犯罪や都市ごとの治安の差が大きいのも事実です。
旅行中は、置き引きやスリといった日常的な犯罪から、ナイトライフでの性犯罪や薬物トラブルまで幅広いリスクに直面する可能性があります。
本記事では、統計データや都市別の注意点を踏まえ、旅行者が安心して楽しむための実践的な防犯知識を解説します。
1. オーストラリアの治安:統計データから見る安心度と注意点

犯罪率の比較
オーストラリアは世界的に見れば治安の良い国に入りますが、日本と比べると犯罪率は明らかに高いのが現実です。
例えば、強盗の発生率は日本の約17倍にも達しており、観光客が集まる都市部ではさらにリスクが高まります。
日本のように「落とし物が返ってくる」という環境を前提にすると油断に繋がりかねません。
特に夜間や繁華街では、バッグやスマートフォンを狙った窃盗が頻発しています。
経済と治安の関連性
失業率の安定は治安維持に一定の効果を与えていますが、それでも社会格差は存在し、犯罪の背景となることがあります。
例えば、シドニーやメルボルンといった大都市では生活困窮者による盗難事件が目立ちます。
観光客は経済的に狙いやすい存在と見られることもあり、持ち物の管理や不用意な行動は避ける必要があります。
銃規制と安全意識
オーストラリアは1996年に大規模な銃規制を実施し、乱射事件のリスクは減少しました。
しかし、完全に銃がない社会ではなく、民間の銃保有率は100人あたり約15丁と高水準です。
観光客は「銃社会ではない」と思い込むのではなく、「ゼロではないリスク」として認識し、特に郊外や治安の不安定な地域では注意を払うことが求められます。
2. 日本人観光客が巻き込まれやすい犯罪とその対策

置き引き・スリ
最も多い被害は置き引きとスリです。
観光中、カフェやレストランでカバンを椅子に掛けたり、スマホを机に置いたまま離れたりすると、ほんの数秒で盗まれることがあります。
日本の感覚で「少しなら大丈夫」と考えるのは危険です。
常に手元から離さず管理することが、最大の防犯策となります。
車上荒らし
レンタカーで旅行する場合は特に注意が必要です。
車内に荷物を残すだけで窓を割られる事件が多発しており、観光地の駐車場でも例外ではありません。
財布やパスポートはもちろん、バッグや衣類といった「何が入っているかわからないもの」さえも狙われます。
車を離れるときは車内を空にする意識が重要です。
宿泊施設での不審者
ホテルやゲストハウスでは、鍵の掛け忘れや不用意な情報開示がリスクを高めます。
部屋番号を他人に聞かれた際に答えてしまう、窓を開けたまま外出するなどの行動は犯罪者にとって好機です。
旅行者は必ず施錠を徹底し、宿泊施設内でも油断しないことが安全確保につながります。
3. 都市別治安ガイド:防犯ポイントとエリア別注意スポット

シドニーとメルボルン
シドニーでは、キングスクロス地区が歓楽街として有名ですが、麻薬や暴力事件が報告される場所でもあります。
セントラル駅周辺も夜間は治安が悪化しやすく、観光客は特に注意が必要です。
メルボルンでは、サザンクロス駅の地下バス乗り場が性犯罪の危険スポットとして知られており、深夜の利用は避けたほうが無難です。
ブリスベンとパース
ブリスベンのフォーティチュードバレーはナイトライフが盛んなエリアですが、ギャングや薬物が絡むトラブルが多発しています。
また、セントラル駅周辺も治安が悪いため、旅行者にはローマストリート駅の利用が推奨されます。
パースではノースブリッジ地区が有名な飲食街ですが、夜になると薬物使用者や酔客が集まり治安が不安定になるため注意が必要です。
アデレード
アデレードのHindley Streetは飲酒や薬物に関連するトラブルが多発するエリアです。
さらに日本領事館が存在しないため、万が一の際には自力で警察や大使館(別都市)に連絡する必要があります。
他都市に比べても観光客が孤立しやすいため、訪問時は特に慎重に行動し、安全対策を強化することが求められます。
4. 観光中に陥りやすい危険な誘惑:性犯罪・薬物のトラブル
ドリンクへの薬物混入

クラブやバーでは、ドリンクに薬物を混入される事件が後を絶ちません。
目を離した隙に薬が入れられ、気づかないうちに意識を失うケースもあります。
飲み物は必ず自分の目の届く範囲に置き、知らない人から受け取らないことが重要です。
甘い誘いのリスク

旅行者は「送ってあげる」「家に招待する」といった甘い言葉でターゲットにされやすい存在です。
特に夜の繁華街やバーでは、優しそうに見える人物であっても警戒が必要です。
安易に信用せず、誘いは基本的に断ることが安全を守る鉄則です。
違法薬物の存在

一部の地域で大麻が合法化されている国もありますが、オーストラリアの多くでは依然として違法です。
観光客が「現地の文化だから」と軽い気持ちで手を出すと、重い刑罰や国外退去につながるリスクがあります。
旅行者にとって関わらないのが最善の選択です。
5. 緊急時の対応と旅行の安心を高める心得
警察・大使館への連絡
トラブルが起きた場合、まずは警察へ通報し、必要に応じて日本大使館や領事館へ連絡しましょう。
パスポート紛失や被害届の提出は、大使館を通じて迅速に対応できるため、緊急時には欠かせない存在です。
移動手段の選択
夜間の移動は特に注意が必要です。
無許可タクシーやヒッチハイクは犯罪に巻き込まれるリスクを高めるため避けましょう。
配車アプリや公式タクシーを利用し、安全性を優先することが大切です。
複数人での行動
単独行動は犯罪の標的になりやすいため、できるだけ複数人で行動することが望ましいです。
また、旅行仲間と常に連絡を取り合い、夜間や人通りの少ない場所では「一人にならない」ことを意識するだけで、リスクを大幅に下げることができます。
注意事項:旅行中に気をつけるべき5つのポイント

ここからは、旅行者が特に意識すべき注意点を整理しました。
これらは一見「小さなこと」に思えますが、被害に遭うかどうかは日常の行動習慣に左右されます。
事前に知っておくことで、不安を減らし、安心して旅行を楽しむことができます。
1. 貴重品は“肌身離さず”をルール化(前抱え・ファスナー・一点化)
旅行中の最も基本かつ重要な防犯対策は、貴重品を常に体の前側で管理することです。
財布やパスポート、スマートフォンはリュックの中や椅子の背に掛けるのではなく、前抱えのショルダーバッグやファスナー付きのサコッシュにまとめて収納するのが理想的です。
オーストラリアの観光地では、観光客がテーブルにスマホやカメラを置いた隙に盗まれる「置き引き」が頻発しています。
さらに混雑する電車やイベント会場では、リュックの背中側からファスナーを開けられてスリの被害に遭う例も少なくありません。
写真撮影時や会計時など、手がふさがる瞬間ほど危険度は高まります。
あらかじめ仲間と「持ち物確認の合図」を決めておき、油断が生じたときに声を掛け合える仕組みをつくることが、安全確保の大きなポイントになります。
2. 車内は常に“空”に見せる(詰め替えは人の少ない別地点で)
レンタカーや自家用車での旅行中、最も狙われやすいのが「車上荒らし」です。
オーストラリアでは、車内にバッグや箱が見えているだけで窓ガラスを割られるケースが多発しています。
中身が空であっても、「何か入っているかもしれない」と判断されると狙われるのです。
そのため、車を離れる際には必ず車内を空に見せるよう徹底しましょう。
駐車直前に荷物をトランクへ移す行為は周囲に「価値ある物を隠した」とアピールしてしまうため避けるべきです。
必ず人目の少ない場所や宿泊施設の駐車場などで荷物整理を済ませ、目的地の駐車場では速やかに立ち去ることが望ましいです。
さらに、サンシェードや布を活用して内部を見えにくくする工夫も効果的です。
車は収納場所ではなく移動手段と割り切り、荷物は常に携行する姿勢がリスクを大幅に減らします。
3. 夜の移動は「一直線で明るい動線」+帰路を先に確保
夜の行動は、犯罪やトラブルに巻き込まれるリスクを大きく高めます。
特に繁華街や駅周辺では、酔客や不審者が増え、旅行者はターゲットにされやすくなります。
安全に行動するためには、まず「帰路を先に確保する」ことが重要です。
タクシーアプリや公共交通の時刻を調べ、帰りの移動手段を確保してから夜の外出を始めると安心感が増します。
また、移動経路は必ず明るい大通りを選び、裏道や公園のショートカットは避けましょう。
照明が整備された人通りの多い通りは抑止効果が働くため、安全性が高まります。
さらに、行動には「タイムリミット」を設定し、深夜遅くまで滞在しないことも重要です。
疲労や注意力の低下が判断を誤らせるため、早めに切り上げてホテルへ戻る習慣を持ちましょう。
これだけでリスクは格段に減少します。
4. ドリンク管理は自分で完結(視線を外さない・受け取らない)
ナイトライフを楽しむ際、バーやクラブでは飲み物に細心の注意を払う必要があります。
海外では「ドリンクに薬物を混入される事件」が後を絶ちません。見知らぬ人からの差し入れはもちろん、席を離れた隙に自分のグラスに不審物を入れられる可能性があります。
これを防ぐには、注文から受け取りまでを必ず自分で行い、飲み物から目を離さないことが鉄則です。
もし少しでも不安を感じたら、その飲み物は廃棄する勇気を持ちましょう。
また、仲間と一緒に「お互いの飲み物を確認し合う」習慣を持つと安心感が増します。
体調に異常を感じた場合はすぐに同行者や店員に伝え、必要なら警察や救急に連絡することが大切です。
ドリンク管理は些細な行動に見えますが、性犯罪や強盗など重大な被害を未然に防ぐ強力な防御策になります。
5. 連絡先・証明の“二重化”で復旧を速くする
万が一トラブルに巻き込まれた場合でも、迅速に対応できるかどうかは「準備」にかかっています。
パスポートのコピーを紙とクラウドに分けて保管し、クレジットカードは複数枚を別の場所に分散して持つことが基本です。
また、在外公館(大使館や総領事館)の連絡先や宿泊施設の住所、旅行保険の緊急窓口番号はスマートフォンと紙の両方に記録しておきましょう。
これにより、スマホを紛失した場合でも即座に行動を起こせます。
さらに、宿泊証明や航空券の控えを準備しておけば、パスポート紛失時の再発行や帰国手続きもスムーズになります。
旅行中は「トラブルが起こらないようにする」ことだけでなく、「起こってもすぐに復旧できる仕組み」を用意しておくことが安心感につながります。
小さな準備の積み重ねが、安全で快適な旅行を支える大きな力になるのです。
おわりに
オーストラリアは大自然や都市の魅力に溢れ、訪れる人々に多くの感動を与えてくれる国です。
しかし、安全は「当たり前」ではなく、旅行者自身の意識によって守られるものです。
事前に治安の特徴を理解し、防犯意識を高めることで、トラブルを回避しながら心から楽しむ旅が可能になります。
本記事が、読者の皆さんの旅行準備に役立ち、安心とともに素晴らしい体験を得るための助けとなれば幸いです。
安全な旅を心から願っています。