
オーストラリアで働いたり、留学中にアルバイトをした人なら、必ず耳にするのが「タックスリターン(Tax Return)」という言葉。
実はこの制度、日本の「確定申告」にあたるもので、毎年の所得に応じて払いすぎた税金を返してもらえるチャンスでもあります。
とはいえ、英語で書類を提出したり、ATO(オーストラリア税務局)のサイトを使うのは、初めてだと少しハードルが高いですよね。
この記事では、オーストラリアの税制度の基本から、タックスリターンの流れ、注意点までを「5つの超要点」でわかりやすく整理します。
これを読めば、もう“税金まわりで損しない”!
オーストラリアの税制度の基本を理解しよう

タックス(Tax)とは?所得税の仕組み
オーストラリアの税金の中心は「所得税(Income Tax)」。収入がある人はすべて納税義務があります。
税金は**源泉徴収(Pay As You Go: PAYG)**方式で、雇用主が給料から自動的に差し引いてATOへ納付します。
主なポイント:
- 税率は所得に応じて段階的に上昇(累進課税)
- 税金を多く払いすぎた場合はタックスリターンで返金される
- 支払い不足の場合は追加納付が必要
ATO(Australian Taxation Office)とは?
ATOは日本の「国税庁」にあたる機関で、オンライン上でほとんどの手続きが完結します。
MyGovアカウントとリンクさせることで、自分の雇用・収入・税金履歴が自動で反映される便利な仕組みです。
MyGovでできること:
- 雇用履歴・収入の確認
- タックスリターンの提出
- Superannuation(年金)口座の管理
居住者・非居住者の違い
税率は「タックスレジデント(Tax Resident)」かどうかで変わります。
留学生やワーホリの場合でも、滞在期間・目的によって扱いが異なります。
ざっくり判断基準:
- 6か月以上、オーストラリアに継続滞在 → レジデント扱い
- 短期滞在・観光目的 → 非レジデント扱い
タックスファイルナンバー(TFN)の取得は最初の一歩

TFNとは?
TFN(Tax File Number)は、オーストラリア版「マイナンバー」。
働く前に必ず取得しなければなりません。雇用主にTFNを提出しないと、最高税率(47%)で源泉徴収されてしまうこともあります。
TFNの取得方法
- 申請場所:ATO公式サイト(無料)
- 必要書類:パスポート、オーストラリア住所
- 所要時間:約10分(郵送で番号が届くまで2週間前後)
TFNの注意点
- 一度取得すれば一生有効(再渡航時も同じ番号を使用)
- 絶対に他人と共有しない(不正利用防止)
- 紛失時はMyGov経由で再発行可能
タックスリターンの提出時期と方法

申告時期
オーストラリアの会計年度は7月1日〜翌年6月30日。
そのため、タックスリターンの提出期間は7月1日〜10月31日が原則です。
この期間内にATOに申告すれば、払いすぎた税金の還付を受けられます。
提出方法
タックスリターンは主に3通りの方法で行えます:
- オンライン(MyGov経由)
→最も一般的。自動入力も多く簡単。 - 登録税理士(Tax Agent)経由
→英語に不安がある人や複数の職場経験がある人におすすめ。 - 郵送(紙フォーム)
→時間がかかるため、近年はほとんど利用されていません。
申告に必要な情報
- TFN
- 支払明細書(Payment Summary または Income Statement)
- 銀行口座情報(還付用)
- 経費や控除の証明書(領収書など)
払いすぎた税金を取り戻す!控除と還付の仕組み

タックスリターンで戻ってくるお金とは?
タックスリターンで還付されるのは、「源泉徴収された税金が実際の納税額を上回っていた場合」。
例えば学生や短期就労者は、所得が少ないため多くの場合税金の払いすぎ=還付金が戻るケースです。
控除(Deductions)できる主な項目
控除申請をすれば、課税対象となる所得を減らせます。
以下のような支出が対象です:
- 仕事用の制服・洗濯費用
- 公共交通機関やガソリン代(業務関連)
- 勉強・資格取得に関する費用
- スマホ代(業務使用分)
還付の受け取り方
- 指定のオーストラリア国内銀行口座に直接振込
- 通常は提出から2〜4週間程度で入金されます
これだけは要注意!オーストラリア税務の落とし穴5選

タックスリターンは「お金が戻る」だけの制度ではなく、申告内容に間違いがあるとペナルティを受けることも。
また、ワーホリや留学生特有の注意点もあります。ここでは、よくあるトラブルや見落としやすいポイントを5つ紹介します。
注意①:居住者・非居住者の区分を間違える
この区分で税率がまったく異なります。
「ワーホリ=非居住者」ではなく、滞在期間や生活実態によりATOがケースごとに判断します。
誤って申告すると、過少申告・過大還付扱いで追徴課税のリスクも。
注意②:税理士を名乗るブローカーに注意
「簡単に還付します!」とSNSで勧誘する業者に注意。
ATO登録のない代理人は違法行為です。
**登録済みTax Agent番号(Tax Agent Number)**を必ず確認し、信頼できる業者を選びましょう。
注意③:控除の証拠を残さない
控除を申請する場合、領収書や明細を5年間保管する義務があります。
ATOが監査を行うこともあり、証拠がないと全額否認されるケースも。
注意④:銀行口座の利息も課税対象
アルバイト収入だけでなく、銀行口座の利息も課税対象になります。
MyGovに銀行情報を登録しておくと、自動で反映されますが、海外送金の際はW-8BENのような書類不要なので混同注意。
注意⑤:期限を過ぎると罰金対象
提出期限(10月31日)を過ぎると、ATOから**Late Lodgment Penalty(遅延申告罰金)**が科せられます。
初回でも約$222から課され、繰り返すと金額が増加。
登録Tax Agent経由なら期限延長が可能なので、ギリギリの人は早めに相談を。
まとめ
オーストラリアの税制度は、一見複雑そうに見えても、基本を押さえればとても合理的。
タックスリターンは「払いすぎた税金を返してもらう」大切な手続きであり、正しく行えばお金が戻ってくることも珍しくありません。
ただし、居住者区分の誤りや証拠書類の紛失など、ちょっとしたミスが大きなペナルティにつながることも。
MyGovや登録Tax Agentを上手に活用し、“正確に・期限内に・安心して”申告することが大切です。
知識さえあれば、タックスリターンはあなたの強い味方になります。
おわりに
オーストラリアで働く、学ぶ、暮らす──そのどれにも「税金の理解」は欠かせません。
税制度をきちんと知ることで、無駄なく、そして安心して現地生活を送ることができます。
タックスリターンは「難しそう…」と思うかもしれませんが、実際は一度やってみるととてもシンプル。
ATOの公式ガイドや日本語サポートサイトも充実しているので、ぜひ早めに準備を進めましょう。
次の7月には、“あなたの還付金”が笑顔と一緒に返ってくるかもしれませんよ。


